研究概要 |
本研究の最終的な目標は, 話者の感性情報をも視聴者へ提示可能な高品位高感性音声提示システムを構築することにある。そのために本研究では, 話者映像の有無や, 話速といった話声の性質, 話者映像と話声の同期, 話者の口の動きといったパラメータが, 音韻知覚及び視聴者の感性情報にどのような影響を及ぼすか定量的に明らかにし, 得られた知見に基づいて, 感性情報を効率的に伝送可能な高感性音声提示システムの構築手法を提案する。 平成20年度は, 本研究期間を通して使用する刺激素材を収録, 収録された刺激の物理パラメータの抽出, 抽出した物理パラメータの音声知覚に与える影響の検討を行った。物理パラメータとして特に話速に着目し, 話速が遅くなることによる音声知覚の変化および映像の寄与, さらには, 映像と音声の時間長が異なる際のズレの検知限, 許容限を心理実験で明らかにした。その際に, ユニバーサルデザインを考慮し, 若齢者だけでなく高齢者を対象とした知覚心理実験を実施した。高齢者の実験結果から, 高齢者の方が若齢者に比べ音声の時間長をより長くした場合でも単語了解度の上昇が見られることが明らかとなった。さらに, 映像と音声の時間長が異なることにより両者にズレが生じた場合でも, 高齢者の方がズレに左右されずに高い単語了解度を示していた。 これらの結果は, 高齢者や聴覚障害者に対し「ゆっくり話す」ことの効果を実験的に明らかにしたものと考えられ, ユニバーサルデザイン指向の音声提示システム構築時には重要な知見となると考えられる。これらの一部の結果は, 平成21年4月に行われる日本VR学会VR心理学研究会にて発表する予定である。
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