本年度の主研究は、研究目的・計画に示しているように、「心理・生理計測に基づく、心理・生理相互関係の多次元的分析による明確化」を中心に行った。 (I) 既に明らかにしている、音楽刺激に対する自律神経系の交感・副交感神経の亢進と心理評価との関係について、特徴の異なる音楽刺激を用いた場合の心理評価と自律神経活動との関係及び、複数の生理計測結果の多次元的分析(多変量解析)結果と心理評価との関係の分析を行った。 [結果]特徴の異なる音楽刺激においても、心理評価と自律神経系の交感神経の亢進との相関関係が示唆された[雑誌論文1件]。また、脳波を含む複数(5種類)の生理計測データを多変量解析 : 主成分分析した結果、その主成分得点と心理評価との相関関係が示唆された[雑誌論文1件]。 (II)一方、生理指標の多角的検討として、唾液による自律神経系を含む、免疫系や内分泌系の分析を試みた。 [結果](1)と同様に、音楽刺激に対する自律神経活動が示唆された。その一方で、音楽刺激による深い癒しの効果や身体・皮膚感覚に関連する音楽再生の条件には、免疫系及び内分泌系の成分が関連している可能性も示唆された[学会発表1件]。 以上より、深い癒し(深い感性)に対する客観評価として自律神経活動が一つの指標となり得ることが示唆されたこと、及び複数の生理計測データの多次元的分析に対する知見を得たことは、大きな意義があるといえる。また同時に、多くの被験者による確認をしながら、多角的視点に立った心理・生理の相互関係追究の重要性も示された。
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