本年度は、最終目的の心理・生理相互関係による感覚変換ソフトウェア基盤技術の開発のために、生理データによる感性反応モデルの検討及び評価語と体感との関係追求を行うと共に、個人適応型の総合的メディアシステムの開発の基盤となる人間の知識・経験等による心理反応への影響を、視覚・触覚・聴覚等の多角的視点から調査した。 【具体的内容】初年度は、複数の音楽刺激に対する心理評価語と自律神経系の交感・副交感神経の亢進等の関係を明らかにした。昨年度は、多角的視点に立った総合的判断が行われる脳活動に注目し、NIRS脳計測装置による酸素化ヘモグロビンの濃度変化量と心理評価との相関関係を明らかにした。本年度は、これまでの成果に基づく感性反応のモデル構築や人間の教育環境に基づく心理反応への影響を、多角的視点(視覚、触覚、聴覚等)において調査した。 [結果]酸素化ヘモグロビンの濃度変化量の生理計測データと心理評価結果から中程度の正相関が得られる感性反応の推定方法を示した[発表予定]。また心理評価語と体感を表す評価語との相関性・影響性等から深い感性モデルを検討した。更に、教育環境等による個人の感性反応への影響は、呈示コンテンツが単純な刺激の場合には少なく、複雑な刺激の場合には大きい傾向を示すことを、多数の実験により明らかにした[雑誌論文・学会発表]。 以上より、心理・生理相互関係に基づいた感覚変換ソフトウェアの基盤技術として感性反応の推定方法を示したことは大きな意義を持つといえる。更に、個人適応型の総合的メディアシステム設計において、呈示コンテンツによる感性反応への影響の違いを示したことは有益な知見を与えたといえる。
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