研究概要 |
過去に腰痛症を患った患者は腰痛の再発に対する心理的不安感から症状改善後も処方された腰椎帯を装着し続ける実態が報告されている. これにより, 体幹部を支える腹筋や腰背筋の脆弱化が懸念されている. このように腰椎帯を装着することの効果には心理的と生理的の両側面があるが, これらの効果は必ずしも一致しないために心理的側面を重視する腰痛患者が, 腰椎帯を不適切に使用する実態がある. このような患者には, 従来の高拘束な腰椎帯を継続的に装着する代わりに, 肌着感覚で着用できる低拘束腰椎帯の使用が有効である. 本研究では, 腰椎帯と身体間の接触圧力を適切に設定することにより, 身体の体幹部が安定的に支持される印象を効果的に与える腰椎帯の試作を目的とする. また本年度はその設計要件および体幹部の加圧方法を検討し, 腰椎帯の試作を目標として以下の3点を実施した. (1)これまでに腹部および腰背部に対して3×3cmの圧縮子を用いて圧力を印加し, 圧力と圧感覚の関係を検討した. その結果, 印加する圧力値が増大するにつれて圧感覚は, 接触した-心地よい-支持感を感じる-よい圧迫感-悪い圧迫感-痛みと変化した. また, 各圧感覚を与える圧力パターンを見出した. すなわち腹部では腹斜筋, 腰背部では脊柱起立筋に沿って適当な圧力を印加することで, 効果的に支持感を与えることができる. (2)上記の結果に基づく圧力パターンを体幹部に与える方法として, a高圧力部位に内挿用パッドを用いる方法とb生地にあらかじめ歪を与えて縫製し, 歪回復時に発生する張力によって圧力を印加する方法を検討した. 試作に用いる生地は市販されている腰椎帯28種類を用いて力学的特性(引張り, 表面, 圧縮特性)を測定し, この結果より選定した. (3)上記のa, bの各方法で試作された腰椎帯を装着し, 接触圧測定を行った. その結果, bの方法による試作腰椎帯が目標とする圧力パターンに近いことが分かった.
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