研究概要 |
本研究では,カオス力学系などのいわゆる非線形力学系モデルで動作する複数の探索点の結合モデルによって最適化を行う「結合非線形力学系最適化モデル」の理論的解析と,これを利用した最適化手法の体系化を目的とした研究を実施している。本年度は,(1)結合離散化勾配系モデルを用いた多目的最適化手法の提案,(2)カオスLagrange関数法の改良とその展開,(3)多点型離散化時変慣性系モデルを用いた大域的最適化手法の提案を行い,1件の学術論文発表と5件の学会発表(うち2件は,査読付き国際会議での発表)を行った。(1)では,結合構造を有する離散化勾配系モデルを用いた多目的最適化手法を提案しており,この手法は,他の多目的最適化手法と比較して優れた探索能力を有している。また,(2)では,まず,前年度に提案した結合勾配系を用いた制約条件付き最適化手法である「カオスLagrange関数法」の最適化性能の改善を行った。また,この手法の勾配の計算に,同時摂動勾配近似を導入し,この手法の適用範囲を,「目的関数の勾配が計算可能」な問題から,「目的関数を計算可能」な問題へ拡張した。さらに,この手法を応用して,混合整数最適化問題を解く手法も提案した。(3)では,離散化慣性勾配系最適化モデルの探索軌道の特性を解析的に明らかにした上で,その結合モデルによって大域的最適化を行う手法を提案し,その有効性を,数値実験を通して確認した。これらの成果のうち,(1)と(2)は,結合非線形力学系最適化モデルの適用範囲を,多目的最適化問題や,制約条件付き微分不可能問題へと拡張した意味において,また,(3)は,いわゆる慣性勾配系の最適化モデルの理論的解析を行った意味において,この種の最適化手法の体系化に大きく寄与するものと考えられる。
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