研究概要 |
画像領域分割は, 画像計測・診断システムなどの根幹を成す画像処理手法の一つである。研究代表者らは, カオス・ニューロンと大域的抑制性素子から成るカオス・ニューロン結合系を提案している。本モデルの並列処理性と離散時間ダイナミクスを有効利用し, 高速な動的画像領域分割システムを開発することが本研究の目的である。ここで, 動的画像領域分割とは, 静止画像における孤立領域の分割と同時に分割画像を時系列に表示する機能を指す。本モデルは離散時間力学系であるにも関わらず, 適切なパラメータ値において, 連続時間力学系で見られるような振動応答がカオス・ニューロン内部に生じる。動的画像領域分割はその振動応答に基づいて達成され, その成否は振動応答の種類に左右される。そこで, 本モデルに生じる振動応答の種類と, それらが存在するパラメータ領域を分岐理論に基づいて解析した。なお, 問題の簡単化のため, 2個又は3値のカオス・ニューロンから成る縮約モデルを解析対象とした。これらは, 2個又は3個の孤立領域を持つ静止画像に対する動的画像領域分割システムに相当する。解析の結果, 2個結合系では同相及び非同相の振動応答が観測され, 3個結合系では完全同相, 部分同相, 及び三相の振動応答が観測された。また, 各々の存在パラメータ領域が特定され, 非同相振動応答又は三相振動応答が発生するようにパラメータ値を設計することで, カオス・ニューロン結合系が動的画像領域分割システムとして正常に動作することを示した。しかしながら, そのパラメータ領域では非振動応答(安定固定点)も共存することが判明した。つまり, パラメータ値を適切に設定したとしても, カオス・ニューロン結合系に与える初期値に依存して非振動応答が発生し, 動的画像領域分割システムとして機能しない可能性がある。そこで, 非線形制御理論に基づいて, 安定固定点の不安定化制御系を設計し, その効果も検証した。
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