研究概要 |
画像領域分割は,画像計測や医用画像診断システムなどの根幹を成す画像処理手法の一つである。研究代表者らは,振動応答を生成できるカオス・ニューロン及び大域的抑制性素子で構成されるカオスニューラルネットワークを提案している。提案モデルの非線形特性と並列処理性を有効利用して,高速な動的画像領域分割システムを開発することが本研究の目的である。平成21年度においては,まず,4個のカオス・ニューロンから成る縮約モデルに見られる振動応答とその分岐現象を解析した。その結果,4相振動応答が観測されるパラメータ領域が明らかになったとともに,平成20年度における解析結果と照合することにより,そのパラメータ領域において他の振動応答が共存していることも明らかにした。そのようなパラメータ値において,定常状態で観測される振動応答は初期値に依存する。そこで,初期値平面における振動応答の引力圏を解析し,それぞれの振動応答が生成されるための初期値領域を明らかにした。これらの解析結果は,動的画像領域分割システムにとって適切なパラメータ値と初期値を決定するために有益な情報となる。一方,提案システムを汎用ディジタルLSIの一つであるField Programmable Gate Array (FPGA)へ実装することも検討した。FPGA実装に際し,状態変数値及びシステムパラメータ値を固定小数点形式で符号化し,更にシステムに含まれる非線形関数を区分線形関数で近似した。種々の実験を通して,FPGA実装したシステムから,動的画像領域分割に適した振動応答が生成されることを実証した。これは,動的画像領域分割システムが,FPGA搭載のモバイル機器等へ実装可能であることを示唆しており,本システムの実用化に際して貴重な情報となる。これら研究成果の一部を国際ジャーナルや国際会議等で発表した。
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