研究概要 |
本研究の目的は、反応拡散系で生じる動的パターンを信号伝播媒体とする、信号伝播とパターン変化が相互に影響しあう系における、信号伝播様式の同定、及びそれらの様式から解釈され得る機能の実験的検証である。具体的には, 信号伝播媒体/経路(信号が存在しうる場)生成系として、スポット状のパターンが進行・分裂することで知られるGray-Scottモデル、及びそれに類するダイナミクスを対象系とする。また経路生成系と相互作用する信号生成・伝播ダイナミクスとしては、活性・抑制因子系で見られる興奮系を想定し、興奮波(反応拡散波)の生成・伝播・消滅を信号の生成・伝播・消滅とみなす。 20年度は対象とする信号伝播経路パターン形成及び信号伝播ダイナミクスの全体的な条件出しとして, 糸の単純化の観点から、まず信号伝播媒体となる時空間パターン生成ダイナミクスの離散化を行った。変数の関係式が連続で表される偏微分系を、離散値のルールで記述するため、繊細な関係の縮約は困難であるが、経路の成長因子を多値化することで、分裂パターンの再現は部分的に実現された。しかし分裂特性に異方性が残っているため、より等方的なルールへの改善を次年度の課題としている。信号伝播を記述する反応拡散波ダイナミクスの離散化については、Tvsonらによる離散ダイナミクスを改変したものを用いるとした。 また上記に関連して、パターン生成・反応拡散波伝播の両ダイナミクスの相互作用方式を検討した。反応拡散波の伝播履歴が、パターン変化の様相に影響を与える条件を見るため、二つのダイナミクスの時定数差がパターンに与える影響を予備的に調べた。しかしこれは経路パターン生成のダイナミクスに強く依存するため、より詳細な検討を次年度も引き続き行う予定である。上記を、既存の計算機資源および20年度購入の計算機システムを用いて行った。
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