本年度は昨年度に引き続き、作成した人名典拠情報の数をさらに増やし、戦前の政治、学術、文化、産業で活躍した人物の人名典拠情報を格納した。具体的には、政治、官僚、軍事などを中心と人物として天皇、皇族、公家を中心とした華族に関する人名典拠情報の作成を行った。また学術関係においては、明治期の帝国大学の研究者情報を格納、さらに、産業界に関しては、戦前期の写真及び印刷産業に関する人名を格納した。そして組織情報としては、これらの人物に関する一部の組織情報を、典拠情報として収録した。これらの人物や組織にはユニークなIDに加えて、Wikipediaなどに情報が掲載されている一部の人物は、試験的にそのURL情報も格納した。 また、既存の人名情報をパブリックドメインの情報としてどのように活用できるかについても調査を行ったが、商業データベースなどの一般敵な利用は難しいが、Wikipediaなどのオンラインの百科事典については権利規定に則った上で、他の資料と比較しながら利用することや、戦前に政府が刊行した、「枢密院高等官履歴」等の情報は政治家や官僚に関する情報として精度が高い。そのためこのようなオンラインの情報リソースと公記録などを比較検証しながら精度の高い典拠情報を構築していくことが、情報の正確性や権利などの問題から望ましいと考えられる。 また既存の、典拠情報の活用面においては、国立国会図書館の協力を得て、国立国会図書館著者名典拠録[JAPAN MARC(A)]を、本プロジェクトで設計した典拠項目にマッピングを行った上で、米国議会図書館などが設計したMADSなどに変換する実験を行った。これらによって、既存の典拠情報の汎用性とその潜在的な可能性についても検証を行った。これらによって、ネットワーク文化情報資源で利用するデータとそれらを活用する基礎的な知見を得るに至った。
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