研究概要 |
本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を解明することを目的とし,近年マーケティング分野等において開発の進む位置情報システムを応用して利用者の館内での行動軌跡記録し,調査対象者へのインタビューと合わせた統合的な質的分析を行うことを目指してきた。3年目にあたる平成22年度は,平成21年度にRFID(無線周波個体識別)の技術を利用して,大学図書館において実施した利用者調査で収集したデータの集計,加工,分析を行った。そして,この成果を日本図書館情報学会において発表した。同時に同分野の研究者やRFIDの専門家に聞き取りを行い,情報収集も継続した。 調査結果のデータ分析により得られた情報探索に関する傾向は,被験者が図書館内の移動の際に,OPAC(蔵書目録)を起点として一般図書やレファレンス資料の排架されている場所を往復していること,事実情報に関する課題の探察では,OPACやレファレンスブックといった二次資料の利用割合が高く,漠然とした課題の探索では一般図書の利用割合が高いこと,被験者の利用する情報源の主題が探索課題の主題と概ね一致することなどであった。さらに,調査後に実施した被験者に対するインタビューの結果と,被験者ごとにエラーと判断して修正したタグのデータの数から,RFIDを用いたこの手法が,被験者の館内の行動軌跡,被験者が探索に使用した情報源の種類や主題といったレベルのデータを得るのに十分な正確さを備えていることが確認できた。
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