研究概要 |
2009年度は,前年度に日米の図書館から収集した,19世紀末から20世紀初頭のアメリカの教育と図書館についての雑誌に掲載された記事中の,小・中・高等学校の図書館に言及した文献の整理・分析をしながら,日米の大学図書館で追加の資料収集を行なった。これらの雑誌記事を用い,アメリカの学校図書館の誕生史を明らかにした実証的研究は,過去には日本のみならず米国でも行なわれておらず,基礎資料を作成することに多くの時間が必要であった。これまでの重要と思われる発見に,次のようなものがある。 ・ジョン.デューイ(John Dewey)が1899年に著したThe School and Societyの中で,学校の中心には図書館があるべきという理念を示したことが,アメリカにおける学校図書館の成立と発展に大きな影響を与えたという過去の一般的な理解にも関わらず,19世紀末から20世紀初頭の教育と図書館についての雑誌には,J.デューイそのほかの教育理論と学校図書館を結びつけて語ったものはほぼ皆無である。これは,学校図書館の理論的根拠と理論的成立を,19世紀末から20世紀初頭の学校図書館史の初期に求めることはできない可能性を示唆していると思われた。 ・メルビル・デューイ(Melvil Dewey)が当時,アメリカ図書館協会(ALA)などにおいて,学校図書館の重要性について熱心に語っており,同氏の影響力を検討する必要性がある。 ・19世紀末から20世紀初頭にかけて,全米教育協会(NEA)の図書館部会が学校図書館の誕生に果たした役割と,NEA図書館部会から,1915年に設立されたALA学校図書館部会への,学校図書館の発展についてのイニシアチブの移譲がいかに行なわれたかの検討が,学校図書館誕生の構造を明らかにするために不可欠であろう。
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