研究概要 |
総数3600枚を超すファッションプレート、コスチューム・パリジャン(Costumes Parisiens)は, 当時のモードを示す貴重な資料として価値は大きい. しかしその色彩は当時のモードにおける色彩嗜好を反映していたのかどうかという疑問が残されていた。そこで、これまでほとんど触れられなかった色彩について調査し. その情報性や当時のモードにおける色彩の流行について検討することとし、まず1830年代の資料について調査した。調査に先立ちコーディネート別にコスチューム・パリジャンの分類を行った。この分類によって年別、月別、ドレスコード別に資料を整理することが可能となった。 調査から、1830年のコスチューム・パリジャンの衣装の色彩とテキストデータの色彩情報は, その内容において両者は共通性を有していることが明らかとなり. コスチューム・パリジャンの色彩は当時のモードにおける色彩嗜好を反映していることが示唆された. 色彩の科学的な調査方法には課題があるが、特定のコスチューム・パリジャンの衣装について, 色調の傾向や, 色相などの特徴の一部を捉えることができた. また, テキストデータの調査からは当時の流行色やアイテム別の色彩傾向を捉えることができた. これまで十分に検証されなかった色彩情報に注目することで, 1830年代パリ・モードの特徴の一端が明らかとなった. 対象が一部に限定されている段階ではあるが, 服飾研究におけるファッションプレートを含むモード誌解析の有用性を示すことができたと考えており, 今後調査対象を拡げることでさらなる知見が得られるものと期待できる.
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