研究概要 |
これまでにJOURNAL DES DAMES ET DES MODES (JDM)を資料として、既にモードと女性像との関係やJDMのメディア機能等についての考察を行ってきた.その中でJDMに添えられたファッションプレートであるコスチューム・パリジャン(Costumes Parisiens以下CP)の衣装の色彩と時評欄「MODES」の色彩情報は,その内容において両者が共通性を有していることを述べた.また,CPの測色調査から特定のコーディネートにおける彩色傾向や,「MODES」からは当時のアイテム別の色彩傾向を捉えることができた.そしてさらに,調査対象を広げて調査を行い,服飾において重要なデザイン要素である色が人とモードにおいてどのように係っていたのかを検討した. その結果,CPからは,調査期間を通して白は支配的な色であり,赤はどの年代においても主要な色相であった.「MODES」からは,調査年に限って見られた流行色を捉えた.白のローブと赤のローブの流行は,伝統的にも確かな価値を象徴するモードと捉え,個々の調査年に限って見られた流行色のローブは新しさを象徴するモードと捉えた.夜会服の着装は他者評価を意識した行動であり,その中で流行色のローブという表現はモードにおける一つの価値を表していたと解した. 今回の調査においてこれまで十分に検証されていなかった色彩情報に注目することで,JDMには色彩についても具体的で詳細な情報が記されていることが明らかとなった.今後さらに調査対象を拡げることで人とモードの関係の解明に資するさらなる知見を得たい.
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