研究概要 |
本研究は、アーカイブズ資料の記述を制御する諸規則の整備によって、検索性能の向上、記述コストの削減を図るため、日本のアーカイブズに適した記述規則の要件について検討するものである。関連分野における記述規則の研究も参照しつつ、日本における記録記述の実態を踏まえた理論と技法を提示する。 1. 国内のアーカイブズ記述実態の調査 膨大かつ多様なアーカイブズ資料を効率的に検索するためには、フォンドやシリーズのレベルを単位とする「集合的記述」を基本とする方式が有効であるとされる。この方式の日本における適用状況と今後の展開についての検討材料を得るために、国内の都道府県文書館の公文書検索手段(30機関、約82,000件分)を対象に、その記述レベル、記述要素およびタイトル記述についての調査を実施した。その成果として、2010年8月、米国テキサス州で開催された米国アーキビスト協会・米国州文書館長会議の合同年次大会において口頭発表を行った。 2. アーカイブズ記述実態の国際比較 上記の実態調査の結果に基づき、アーカイブズ記述の理論と原則をめぐる欧米と日本の相違点を明確化した上で、それを生み出す要因と背景について考察した。その成果として、2010年3月、中国人民大学(中国・北京市)で行われた同大学情報資源管理学院との研究交流会において口頭発表を行った。 3. 米国のアーカイブズ検索手段の実態調査 上記の調査等から、日本には集合的記述の方式を用いたアーカイブズ検索手段の実例が少なく、その特徴や意義も十分に理解されているとはいい難いことが判明した。そのような日本の状況との対比を図るべく、この方式が発達した米国において開発されている現代公文書の検索手段の実際について調査を実施した。その成果として執筆した論考が、『国文学研究資料館紀要アーカイブズ研究篇』に掲載された。
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