研究概要 |
知覚世界を安定化するメカニズムとして, 運動に伴う視認性低下や注意選択に伴う周辺抑制などが挙げられる. オブジェクト置き換えマスキングは, ターゲット-マスク間のオブジェクト連続性知覚に伴う情報更新(object updating)や残存マスクがトリガーする周辺抑制野が関与していると想定され, 知覚世界を安定化するメカニズムを反映した現象であると考えられる. オブジェクト置き換えマスキングがイメージレベルの効果を統制したうえで主観的輪郭線から構成される主観的図形をマスク刺激として用いた場合にも生じることを示し, 高次のオブジェクトレベルの干渉が実際に作用している証拠を得た.この成果はEuropean Conference on Visual Perception annual meetingおよび日本心理学会で発表し, Journal of Experimental Psychology : Human Perception and Performance誌に掲載が決定している(印刷中).また, 同マスキング現象に関するレビュー論文が心理学評論誌に掲載された. 知覚世界の安定化には, 関連刺激の選択と無関連刺激の抑制も重要である.トップダウンの注意制御が視覚的アウェアネスに及ぼす影響を, 個人差に注目してメタコントラストマスキングと機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて調べた. その結果, 注意効果の大きさは後頭領域における信号強度と正の相関を示し, 右頭頂間溝(IPS)から両側の紡錘状回(fusiform gyrus)へのeffective connectivityとも正の相関を示すことが明らかとなった. この成果はAssociation for the Scientific Study of Consciousness annual meetingで発表され, Neuroimage誌に掲載された.
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