研究概要 |
知覚世界を安定化するメカニズムとして,運動に伴う視認性低下や注意選択に伴う周辺抑制が挙げられる.本研究課題で主に扱ったオブジェクト置き換えマスキング(OSM)と呼ばれる現象は,ターゲット-マスク間のオブジェクト連続性知覚に伴う情報更新や残存マスクが駆動する周辺抑制野が関与すると想定され,知覚世界を安定化するメカニズムを反映していると考えられる.OSMが主観的輪郭線から構成される主観的図形をマスク刺激として用いた場合にも生じることを示し,高次のオブジェクトレベルの干渉が実際に作用している証拠を得た.また,OSMの視野上での非対称性がマスク刺激の網膜部位ではなく注意のシフトに依存することを示した.これらの成果はいずれもJournal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance誌に掲載され,後者は日本心理学会第73回大会で発表された. 知覚世界の安定化には,関連刺激の選択と無関連刺激の抑制も重要である.メタコントラストと機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,トップダウンの注意制御が視覚的アウェアネスに及ぼす影響を明らかにした.この成果はNeuroimage誌に掲載された.また,高速逐次視覚呈示された二つのターゲットを報告する際に両ターゲット間の時間間隔が短いと二つ目のターゲットを頻繁に見落とす,注意の瞬き現象に対して,頭頂間溝(IPS)と下頭頂小葉(IPL)が異なる寄与をしていることを経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて明らかにした.この成果はNIPS International Workshop for Scientific Study of Conscioiusnessにて発表され,Journal of Cognitive Neuroscience誌に掲載が決定した(印刷中).
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