本研究の目的は、従来の統計的推定を予測という視点からとらえなおして、時系列解析から量子系まで、よりよい予測分布を構成する普遍的な理論の構築を目指すことである。 (1)時系列解析における研究 時系列データの統計モデルであるp次のAR過程で、なんらかの正当性に基いた無情報事前分布はモデルの複雑さのため提案されていない。一方で空間統計などでもAR過程は利用されつつある。ARモデルの場合には筆者がすでに発見している優調和事前分布を利用することで漸近的には精度よい予測ができる。本研究では、さらに、応用上の観点から有限の長さの時系列データで実際に理論がどの程度有効か詳細に調べる。また、より広い統計モデルであるARMAモデルの場合について、優調和事前分布が存在するかどうか、微分幾何学的な量に注目して明らかにしていく。このような性質は統計モデル多様体の幾何学的な性質で決まるため、一般の時系列モデルでの優調和事前分布の存在の簡便な判定条件を微分幾何学の言葉で与え、具体的な構成方法の提案を試みる。 (2)量子系におけるベイズ予測 量子系の場合にはベイズ予測の手法自体がまだ整備されていない。そのため、個別の量子統計モデルで、よりよい予測を与える手法を与え一般論を構築する。古典系でのジェフリーズ事前分布に基づく量子ベイズ予測の性能について理論的に検討し、ジェフリーズ事前分布より望ましい事前分布が存在するための必要十分条件を導出する。
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