Body Mass Index(BMI、体重/身長^2)は重要な健康関連指標だが、数十年単位の経年的加齢変化を計量的に評価した報告はなく、横断調査(ある時点の調査)から得られる加齢変化を、出生コホートによる違いは無視して用いている。-方、国民健康・栄養調査は我が国の代表的な繰り返し横断調査で60年間の記録が存在する。そこで、本調査データを利用し、出生コホートを考慮したBMIの加齢変化を研究中である。本年度は、0〜25歳女性の結果をBritish Medical Jourual(BMJ)、20〜60代成人男女の結果をIntemational Joumal of Epidemiologyに論文公表した。前者では、日本人女性は、より最近の出生コホートほど、子供の頃はより過体重だが、成人するとよりやせていることを示した。後者では、横断調査と出生コホート別では加齢変化のパターン自体が異なること、コホート間の違いは20代で既に確立していること(男性では30代までに少し広がる)、20-60代での増加量は出生コホート間で同程度であること、男性は1891-1900から1971-80コホートまで全ての年齢層でBMIが上昇しているが、女性は1931-40コホートまで上昇した後に減少に転じていることを示した。世界的に成人肥満に続き、小児肥満が盛んに議論されているが、多くの研究は限られた年齢層や、限られた観察年数のデータに基づいている。特に、小児の肥満ややせの(国際)基準作成は、成長の加速化現象などをデータに基づき多角的に考える必要がある。日本の60年間という長期データにより、幅広い年齢層で出生コホート別変化をみる重要性を示したこと、従来着目されていなかった「繰り返し年次調査」という研究デザインの利点を示したこと、幅広い読者層を持つ国際的医学誌に公表したことは意義が高い。
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