研究概要 |
空間疫学において、ある疾病や症状の発生が集中(集積)しているかどうかを検出し、集積が認められる場合その集積地域を同定するために疾病集積性の検定法という検定方法が用いられる。特に集積が認められる疾病は感染症であったり、また、その地域に何らかの原因がある可能性が考えられたり、同定された集積地域(クラスター)に対して更なる調査の必要性が示唆されることになる。本研究では従来の集積性検出のためのスキャン統計量について,クラスター同定の様子・性質を理論的、数値的に検討し、その上でより精度良く地域を同定できる検定統計量の提案をめざし,実データの解析など関連の研究も含め検討することを目的としている。 本年度は特に時間・空間集積性の検定として,サーベイランスに適した新たなモデルに基づくスキャン統計量の開発,評価を行った。実際のデータへの適用やシミュレーションを通して,その有用性が確認できた。またこれらのスキャン統計量に関して,疾病以外の分野として,遺伝子情報におけるスニップの同定や,医療費など保健医療情報の地域差についても検討を行い,今後の適用の可能性が確かめられた。さらに,地域差を考慮した新たな統計量の導出を行い,簡単な数値比較を行って従来法よりも精確な同定ができる様子が確かめられたが,今後の更なる検討が必要と考える。
|