研究課題
本年度は最終年度として以下のような成果を得た。本研究課題の目的は、初期胚発生において前後軸に沿った領域分化のマスター遺伝子であるHoxを中心とした転写調節ネットワークのシステム進化解析である。バイオインフォマティクスの方法により、前年度、マウスの咽頭胚期におけるHoxの転写調節ネットワークの同定を行ったが、本年度はホヤ、ショウジョウバエについても同定を行った。用いた方法は、前年度と同様に、公共に公開されているin situハイブリダイゼーションやESTのデータなどの発生過程の遺伝子発現のデータベースから、各発生段階・各組織で発現している遺伝子を取得し、これらの遺伝子についてHox転写因子の転写上流解析、文献での共起関係の解析、転写因子結合サイトの進化的保存性の解析を行うという手法である。本同定方法の有効性は、理化学研究所の近藤隆ユニット長と共に、マウスの味蕾の発生を制御する転写調節ネットワークを同定、in vivoでの確認に成功したことで示しており、本年度にPLoS Genetics誌にその成果は掲載された。同定したHoxの転写調節ネットワークについて、文献で報告されている既知の転写調節関係を調べ、検証した。こうして得られたHoxの転写調節ネットワークについて、発生ステージに沿って階層的に3Dで可視化するためのアプリケーションとして我々が開発したBioCichlidを利用して可視化し、マウス、ホヤ、ショウジョウバエの3生物種間で、そのネットワークを比較解析した。また、転写調節ネットワークではなく、酵母などのタンパク質間相互作用ネットワークの進化解析を行い、比較した。こうして得られた最終成果は生物進化の国際学会であるEuropean Society for Evolutionary Biology 2009において発表した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
PLoS Genetics 5
ページ: e1000443