生体情報システムは様々な階層においてネットワークとして捉えることができる。本研究では、二つの異なるネットワークデータ(タンパク質分子内の残基間ネットワーク・タンパク質間相互作用ネットワーク)に、位置情報を考慮できる統計学(空間統計学)を適用し、タンパク質の生化学的機能・生物学的機能を解明する次の二つの手法を開発した。 手法A: アミノ酸配列の保存度の、立体構造上における空間的自己相関の強度を利用して、タンパク質の立体構造が一つ与えられた時に、その立体構造とフォールドが同じで、かつ、機能部位の位置が保存れている配列空間の範囲を予測する手法を開発した(submitted)。この研究成果を、本研究に先立さ開発した立体構造上での機能部位予測手法と共に、Functional REgion Prediction of a protein by using Spatial statistics (FREPS)として提供している(http://freps.cbrc.jp)。 手法B: タンパク質間相互作用ネットワークにおいて、各タンパク質の保存度に関する空間的自己相関が観察されることを示した。次に、パーティーハブ(PH)はデートハブ(DH)に比べ進化的に保存度の高いタンパク質と相互作用する傾向があることを示した。さらに、このPHとDHの性質を利用することで、タンパク質間相互作用ネットワークデータが与えられた時に、アミノ酸配列情報と複合体立体構造情報を利用して、ネットワーク内でハブとなっているタンパク質のPHらしさ、DHらしさを表現する指標を開発した。DHとPHの区別は、タンパク質間相互作用ネットワークの動的・時空間的挙動と強い関連性を持つため、本研究の成果はタンパク質間相互作用ネットワークを解析するための新たな指標として期待される。
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