研究概要 |
大脳皮質ではその機能を果たす基になっている局所的な構造(局所回路)は一定の共通性をもつことが知られている.この普遍的な局所回路の機能を理解するために局所回路の挙動を予測しうる理論を構築することを目指している.局所回路の挙動を理解するためには,多くの神経細胞の内部電位変化を同時かつ高時間分解能で記録することが理想であるが,現在ではこれは非常に困難である.そこで,本研究課題では局所回路の階層性とその相互作用に着目して,素子→結合→回路の3つの段階に分けて研究を遂行していく. 平成20年度は主に素子の性質に着目し,動的膜特性に基づく錐体細胞の分類に関する研究を遂行した.神経細胞はいままで静的な性質を元に特徴づけられてきたが,本研究課題では動的な性質に着目して神経細胞を捉えなおした.具体的には,神経細胞が生成するスパイク時系列の統計性に基づいて神経細胞の分類をし,その機能的意義を考察した.また,単一の神経細胞の電気応答を正確に予測するモデルの構築を行い,そのモデルに基づいて神経細胞を特徴づけた.このような神経細胞のモデルは局所回路の数値シミュレーションやハイブリッド実験を行う上で非常に重要になる.モデルの回路の挙動に関しては,神経細胞の動的膜特性の不均一性が脳の局所回路の挙動に与える影響について,位相応答解析を用いて解析した.これらの研究に関して学会発表を行った.さらに平成21年度には階層的局所回路の構造と動態が情報処理装置としてどのようにはたらくのか調べるため,生体とコンピュータのハイブリッド実験を行うことを計画しているので,そのハイブリッド実験系の構築を行った.
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