研究課題
本研究では、成体脳における機能的左右性形成の分子基盤解明を目的として、21年度は、さらに、線条体でのカドヘリン20遺伝子発現細胞種の特定を進めた。まず、カドヘリン20遺伝子発現細胞の中に介在ニューロンが含まれるかどうかを明らかにするために、線条体投射ニューロンにのみ発現するCIPT2に注目し、その抗体を用いて、in situハイブリダイゼーション法と免疫染色法による2重検出を行った。その結果、カドヘリン20遺伝子を発現する全ての細胞はCIPT2陽性であった。したがって、前年度の結果と合わせると、カドヘリン20遺伝子は介在ニューロンには発現せず、2種類の投射ニューロンのうち、少なくとも間接路のニューロンには発現することが明らかとなった。さらに本年度は、前年度に引き続き、カドヘリン20遺伝子の左右非対称性発現の出現頻度の解析を進めた。その結果、左右脳において対称に発現する個体数は、左脳優位に非対称に発現する個体数より多く、偏りが存在することが示唆された。興味深いことに、ラットにおける利き手判定としてfood reachingテストが過去に行われ、いくつかの報告でも、ラットはその約70%は右手優位であり、約10%は左手優位、残り約10%は両利きであることが報告されている。そこでカドヘリン20遺伝子発現の左右差と利き手との間に関連性があるのかどうかを明らかにするために、ラットの利き手テストを立ち上げた。Food reaching装置を独自に作製し、利き手テストの予備的実験を行った。ハンドリング後40分間に餌を取る5回の試行のうち、明らかに右手または左手を優位に使用する個体を同定することが出来た。したがって、利き手を判別した個体において、カドヘリン20遺伝子の発現様式と利き手との関係性を解析することが実際に可能になると考えられる。
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