本年度においては、dPQBP1遺伝子とその学習記憶関連遺伝子の関連について研究を進めた。我々はdPQBP1変異体で見られる学習障害が記憶メカニズムについて新たな知見を与えるものではないかと注目している。 projection neuron特異的にdPQBP1 RNAiによる顕著な学習能力の低下が観察されているが、この変異体ではantennal lobeを含む一部領域特異的にNMDAR1の発現が低下していることを発見した。dPQBP1変異体においてNMDAR1を過剰発現させることにより学習獲得の障害が回復できることを明らかにした。また、温度感受性Ga180、Ga180^<ts>を用いることによりdPQBP1変異体における学習障害が発生依存的なものではなく、成熟後の機能的な変化によるものである事を示した。また、projection neuron特異的なdPQBP1遺伝子の発現抑制が変異体と同様の学習障害を引き起こすことについて、新たな材料を用いより詳細な証明を与えた。dPQBP1はprojection neuronで働く初めての嫌悪学習での記憶遺伝子ではないかと考えられる。さらに、dPQBP1変異体においてprojection neuronで、dNR1の発現が変化していることを組織免疫染色学的にさらに詳細に解析した。さらに、より詳細なprojection neuronの形態解析、及び定量的な発現解析等を用いdPQBP1変異体で起きている形体的・機能的な変化を具体的に記載した。
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