研究概要 |
(1) エピトープタグを融合したRac1およびRac3ノックインマウス(tag-Rac1, tag-Rac3マウス)の作製 tag-Rac1マウスについては、得られた相同組換え体ES細胞からキメラマウスの作製を試みたが、ES細胞の寄与率が高いキメラを得ることができなかった。このため、再度、相同組換え体ES細胞の単離を試みる。またtag-Rac3マウスについては、繁殖により解析に使用する十分なホモ接合型マウスを得ることができた。 (2) 大脳皮質形成におけるRacタンパク質の発現解析 Rac1とRac3はアミノ酸配列の相同性が極めて高いため、それぞれに特異的な抗体を作製することは困難である。そこで、tag-Rac3マウスを利用し、Rac1とRac3をタンパク質レベルで区別して検出することを試みた。tag-Rac3マウスにおいては、Rac3の分子量がエピトープタグの分子量(約3.5kDa)だけ大きくなる。このため、pan-Rac抗体によるウエスタンブロットによって、Rac1とRac3の発現量を同時に比較することができる。0日齢から成体マウスの脳懸濁液を用いてウエスタンブロットを行った結果、Rac1の発現量は発生を通して一定していたのに対して、Rac3の発現量は生後8日でピークを迎え、その後減弱していくことが明らかとなった。全ての時期において、Rac3の発現量はRac1よりが格段に少なかった。また、FLAGタグに対する抗体を用いた免疫染色を行なった結果、生後8日においてRac3は脳全体に発現していた。これらの結果より、Rac3は発生の途中に一過的に発現し、脳の発生に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられた。
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