研究概要 |
研究実施計画に従って、エピトープタグをRac3に付加したノックインマウスの作製を行い、Rac3の発現量が最も高い生後8日の脳を用いて、Rac3複合体のアフィニティー精製を行った。ところが、精製複合体には非特異的な夾雑タンパク質が多く、質量分析による相互作用分子の同定には至らなかった。そこで次に、GST-Rac3タンパク質を調製し、これをbaitとしてRac3結合タンパク質の精製を行った。生後8日目の野生型マウスの脳懸濁液にGTP-gamma-SあるいはGTP-beta-Sを加え、その後にRac3複合体を精製することによって、活性化または不活性化Rac3特異的に結合する因子の同定を試みた。精製した複合体はiTRAQラベルし、nano-LCタンデム質量分析計を用いて分析することによって、活性型複合体因子と不活性型複合体因子の網羅的同定と同時に相対定量を行った。その結果、活性化型Rac3特異的な結合タンパク質としてPAK3, betaPIX, GIT1, GIT2を同定することができた。PAK3およびbeta-PIXは、RhoファミリーGタンパク質のエフェクターおよび活性制御因子であり、ヒトにおいては精神遅滞の原因遺伝子として知られている非常に重要なタンパク質である。今後、これらのタンパク質について個体レベルにおいて機能解析をすることによって、神経高次機能におけるRacシグナリングの重要性について明らかにしていく。
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