研究概要 |
神経細胞は、樹状突起と軸索という、機能的・構造的に大きく異なった領域をもった極性細胞である。神経細胞の極性とその維持は、神経細胞の情報伝達・記憶維持の発現に必須である。神経細胞の極性そのものが決定される機構については近年、解明が進んできた。しかし形成された極性にしたがって、生涯にわたって細胞内部位特異的にタンパク質が輸送される機構については不明な点が多い。申請者はこれまでの研究により、AMPA型グルタミン酸受容体はStargazinを含むTARPファミリータンパク質を介して小胞輸送を制御するAdaptor Protein Complex-4(AP-4)に結合することを明らかにしている(Neuron2008)。AP-4はβ,ε,μ,σの4つのサブユニットからなる4量体タンパク質複合体であり、この中のβサブユニットのノックアウトマウスではAMPA受容体が軸索に輸送されるようになることも示している(Neuron2008)。 本申請研究は上述の結果をさらに発展させ、AP-4がどのようなメカニズムで、どのようなタンパク質(群)を樹状突起特異的に輸送するのか、そしてその樹状突起特異的輸送の生理学的意義は何なのかを明らかにしていくことを目的としていた。どのようなメカニズムで樹状突起特異的輸送を司るのかを明らかにするために、AP-4に結合するタンパク質をYeast Two-Hybrid法により同定することを試みた。その結果、Rhotekin、EMAP、Zyxin mLin-7といったタンパク質がAP-4に結合するタンパク質候補として単離された。これらのうち、mLin-7はNMDA受容体の樹状突起特異的に重要な働きをすることが報告されており、現在このmLin-7とAP-4複合体がAMPA受容体の樹状突起特異的輸送を制御しているか否かの解析を進めているところである。
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