大脳皮質の皮質内回路は80%の興奮性細胞と20%の抑制性細胞から構成されている。大脳皮質5層の錐体細胞は皮質外投射・発火様式・樹状突起分枝・興奮結合選択性からいくつかのサブタイプに分けられることが次第に明らかになってきている。また、抑制性細胞は発火パターン、化学マーカー及び、形態で多様なサブグループに分けられることが知られている。特に抑制性細胞のサブグルロブ内で50%以上を占めるFast-spiking(FS)細胞に着目し、皮質内回路における興奮性一抑制性の機能的意義について明らかにすることを目的として研究課題に取り組んだ。本研究では、前頭皮質5層錐体細胞を皮質外投射パターンから、一つは軸索が錐体路に入り橋核まで行くもので(橋核投射錐体細胞)、もう一つは線条体に軸索側枝を伸ばすが、それより尾側には投射しない(両側線条体投射錐体細胞)のサブタイプに分け、2種のサブタイプとFS細胞のシナプス結合パターンを、多重ホールセル記録をすることによって調べた。その結果、1.錐体細胞のサブタイプによらず、FS細胞に興奮結合する錐体細胞は、そのFS細胞から抑制を受ける確率が高くなると、2.単一FS細胞から2個の錐体細胞への抑制の強さが、サブタイプの組み合わせ、錐体細胞間結合に依存する可能性があることが明らかとなった。以上のことから、錐体細胞の興奮結合選択性が抑制性シナプス形成に影響を与え、FS細胞を組み込んだシナプス結合機能モジュールができることが推定された。
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