小脳が運動制御を司っていることは十分なコンセンサスが得られているが、運動記憶が小脳内のどこに蓄えられるかは議論が分かれている。一つの仮説(伊藤仮説)では小脳皮質の平行線維-プルキンエ細胞シナプスに蓄えられるとし、別の仮説(Miles-Lisberger仮説)では苔状線維-小脳核シナプスに蓄えられるとした。ごく最近、運動記憶は短期的にまず小脳皮質に形成され、学習を継続することでその記憶が徐々に小脳核に転送され、長期的に固定化することがわかってきた。よって「伊藤仮説対Miles-Lisberger仮説」の対決は一応の決着を見そうではあるが、そもそも記憶の転送が行われるメカニズムは全くわかっていない。本研究では、これまで私が構築してきた小脳モデルを元にして、記憶の皮質から核への転送メカニズムと核での固定化のメカニズムを理論的に考察する。
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