研究概要 |
神経回路形成過程の神経軸索先端部に現れる成長円錐は,細胞外環境に存在するさまざまな軸索ガイダンス因子の濃度勾配に誘引・反発されることで軸索を正しい標的まで牽引する。本研究課題では,成長円錐の‘反発性'旋回運動の駆動メカニズムとして,成長円錐における左右非対称性エンドサイトーシスの関与を明らかにすることを目的としている。平成20年度は,各種エンドサイトーシス阻害剤を用いた実験により,反発性旋回運動にクラスリン依存性エンドサイトーシスが必要なこと,成長円錐での左右非対称性エンドサイトーシスが旋回運動の十分条件になりうることを明らかにした。 そこで平成21年度は,旋回運動誘発時における成長円錐内でのエンドサイトーシス頻度の左右非対称性を検証した。まず蛍光タンパク質標識されたクラスリンおよびダイナミン1遺伝子を培養ニワトリ胚脊髄後根神経節細胞に導入し,両者の挙動を多波長全反射蛍光顕微鏡により観察することでクラスリン依存性エンドサイトーシスを可視化した。その上で,ケージドカルシウム光解離法により成長円錐片側で反発性カルシウムシグナルを誘発したところ,カルシウムシグナル側でエンドサイトーシス頻度が上昇した。この非対称エンドサイトーシスは,カルシニューリン阻害剤処理によって消失した。一方で,誘引性カルシウムシグナルでは非対称性エンドサイトーシスは誘発されなかった。 以上の結果から,反発性カルシウムシグナルはカルシニューリンを介してクラスリン依存性エンドサイトーシスを促進し,その結果として成長円錐の反発性旋回が誘発されることが明らかになった。
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