研究概要 |
ラット脳におけるDGKβmRNAシグナルは線条体,側座核,嗅結節,嗅球,海馬,大脳皮質に強く、また下垂体中間葉にも認められることが特徴である。報告者は確立した抗DGKβ抗体を用い、ラット脳線条体と海馬および下垂体において、共焦点レーザー顕微鏡による観察、免疫電子顕微鏡法および海馬初代培養細胞への遺伝子導入実験により、DGKβの神経細胞内微細局在および機能を詳細に解析した。その結果、以下のことを明らかにした。 <脳(線条体および海馬)> (1)DGKβは線条体においてドーパミンD1/D2受容体を有する投射ニューロン(medium spiny neurons, MSNs)に発現し、介在ニューロンには認められない。一方、海馬では投射ニューロンと介在ニューロンの両方に発現する。 (2)DGKβは線条体MSNsおよび海馬ニューロンにおいて、興奮性シナプスを構成する棘突起のシナプス後膜肥厚に非常に近接した形質膜領域に局在する(図2)。 (3)DGKβはニューロンの発達において、樹状突起の伸長と棘突起の成熟を促進する。 <下垂体> (1)DGKβは、下垂体中間葉メラニン細胞刺激ホルモン産生細胞の形質膜に局在する。 (2)下垂体中間葉メラニン細胞刺激ホルモン産生細胞に発現するイノシトールリン脂質代謝関連酵素はドーパミンD2受容体、フォスフォリパーゼCβ4およびプロテインキナーゼCαであり、DGKβがこれら分子とともに細胞内シグナル伝達を担う可能性がある。
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