研究課題
本研究の最終目的は、逆行性経シナプストレーサー(Tetanus Toxin C fragment, TTC)もしくは順行性経シナプストレーサー(Wheat germ agglutinin, WGA)を発現するウイルスベクターを開発し、その後成体ラットを用いて視床・大脳新皮質局所神経回路の定量的解析を目指すものである。昨年度は、神経細胞特異的かつ高発現を可能にするレンチウイルスの開発を行った(Hioki et al., 2009)。神経細胞特異的プロモーターであるSYNプロモーター下でテトラサイクリン調節性トランス活性化因子(tTA:Tet-Off)を発現するウイルス、Tet応答性プロモーター下でGFPを発現するウイルスを二重感染させるシステムを利用することで、目的遺伝子の発現量が従来のシステムに比し、40倍程度まで増強した。そこで本年度は、Tet-Offシステムを用い(a) TTCもしくはWGAとレポータータンパク(蛍光タンパク)を共発現するレンチウイルスの開発、(b) TTCもしくはWGAの検出法の最適化を試みた。(a) Tet応答性・双方向性プロモーター(TREB)を用いて実験を始めたが、2種の遺伝子発現量が感染細胞によって大きくばらつくといった問題に直面した。そこで共発現に最適なシステムの開発を行った結果、手足口病ウイルス由来の2Aシグナルを利用すればよいことが分かった。現在は2Aシグナルを用いたレンチウイルスの作成に着手したところである。(b) 『抗体の作成・精製』『PAP法とTSA法を組み合わせた高感度増感法の開発』を行った結果、TTCについてはシナプスを逆行性に超えたタンパクの検出に成功した。ただし、染色毎にばらつきが生じるため、更なる改良が必要と思われる。WGAについては現時点でシナプスを超えた像を検出できていない。
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http://www.mbs.med.kyoto-u.ac.jp/default.html