コンドロイチン硫酸(CS)は、硫酸化パターンの異なる5種類の基本二糖類(CS-AからCS-E)が様々な組み合わせで数十から二百程度重合した直鎖状硫酸化ムコ多糖で、神経損傷に応答して発現が誘導される細胞外糖鎖分子である。CSが分子内の硫酸基結合部位の違いによる微細の構造変化により、神経細胞の接着や突起伸展を変化させることわかってきている。本研究では、損傷部位で移植-神経幹細胞の生着、分化を制御するCS糖鎖構造と、その構造により惹起される分子シグナルを培養神経幹細胞を用いて検討した。 胎生14日のマウス終脳から神経幹細胞を調整し、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)存在下で単層培養法により培養した。生化学工業(株)から購入したCS-AからCS-Eを培養液に添加し、神経幹細胞の接着や分化を変化させるCS糖鎖構造を検討した。その結果、CS-Eを添加して培養した細胞で著しい接着性変化が観察された。DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、CS-Eを添加して培養した細胞では、グアニンヌクレオチド交換反応促進因子(GEF)や、ある種のケモカインなど86種類の遺伝子で発現変動を認めた。現在、変動を認めた遺伝子、その遺伝子がコードする蛋白質を介した分子シグナルの解析を進めている。
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