私は、研究計画にある、錐体細胞への入力様式の解明の前に、皮質内の抑制性局所回路を形成する、介在ニューロンへの入力パターンを解明することが重要であると考え、以下の実験を遂行した。 介在ニューロンはそれぞれの形状や保有するタンパク質によってさらにいくつかのサブタイプに分類される。私はラット大脳皮質組織切片の蛍光多重免疫染色を行い、大脳皮質内の介在ニューロンの大部分を占めるfast-spiking(FS)細胞への入力パターンの解明を試みた。FS細胞の識別にはparvalbumin(PV)を利用した。皮質一皮質問の興奮性神経終末にはVGluT1、視床-皮質問の興奮性終末にはVGluT2がそれぞれ局在することが知られているので、それぞれのVGluTに対する抗体を用いて上記の抗PV抗体との多重免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて連続断層画像を撮影し、FS細胞の細胞体/樹状突起に対するVGluT1/VGlT2-positive boutonの密度を計測した。 さらに、PV陽性のFS細胞を識別する方法として、vicia villosa agglutinin(VVA)を用いた染色法が知られている。300μm厚の切片における、VVA染色細胞に対する蛍光色素、Lucifer yellowの微量注入を行い、50μm厚の切片に薄切の後、上記の抗VGIuT抗体を用いた多重蛍光免疫染色を行った。蛍光画像が上記と同様共焦点レーザー顕微鏡を用いて連増断層画像を撮影し、Lucifer yellow注入細胞についても同様のVGluT1/VGluT2-positive boutonの密度の計測を行った。 これらの研究をさらにすすめることにより、皮質ニューロンの反応選択性のメカニズムの理解や皮質内局所結合モデルの構築に貢献する可能性が見込まれる。
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