21年度に引き続き、私は大脳皮質内のfast-spiking(FS)細胞への興奮性入力パターンの解明を継続中である。大脳皮質は密度の異なる6つの神経細胞層から構成されていることから、それぞれの層におけるFS細胞への興奮性入力パターンの解明を試みた。大脳皮質のFS細胞は主に2種類の興奮性の入力を受けている。1つは大脳皮質内の錐体細胞からの入力(皮質-皮質問入力)で、もう1つは視床からの入力(視床-皮質問入力)である。FS細胞の識別には昨年度と同様に、parvalbumin(PV)の免疫染色、若しくはvicia villosa agglutinin(VVA)を用いた染色後に蛍光色素であるLucifer yellowの微量注入を行った。皮質-皮質問の興奮性神経終末にはvesicular glutamate transporter type 1(VGluT1)、視床-皮質間の興奮性終末にはVGIuT2がそれぞれ特異的に局在することが知られている。これらのVGIuTに対する抗体を用いることで、それぞれの興奮性神経終末を免疫組織学的に識別することが可能である。この特性を活かし、脳組織切片の蛍光多重染色を行つた後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて連続断層画像を撮影し、FS細胞の細胞体、及び樹状突起に近接するVGluT1/VGluT2-immunolabeled terminal boutonを観察し、その密度の計測を行った。 その結果、FS細胞の細胞体/樹状突起はその殆どが皮質-皮質問の興奮性神経終末のマーカー蛋白である、VGluT1-posiUve boutonによつて占められていることが判明した。視床-皮質問の興奮性終末のマーカー蛋白であるVGluT2-positiv eboutonはFS細胞の細胞体/樹状突起にも僅かな近接しか確認できなかつたが、視床入力が比較的豊富に見られる、前頭皮質4層のFS細胞の細胞体には全体の興奮性入力の約2割をVGluT2-positive boutonが占めることが確認された。 これらはFS細胞が視床からの興奮性入力を皮質4層では細胞体で直接受けていることを示唆する結果である。
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