研究概要 |
神経管閉鎖は発生の極めて早い段階でおこる現象であり、発生初期の解析にはツメガエルは優れたモデル動物である。ツメガエル実験系を用い、葉酸代謝関連酵素や代謝型グルタミン酸受容体及びZicに注目し、神経管閉鎖不全の分子機構解明を目指す。 葉酸代謝酵素であるMTHFRと代謝型グルタミン酸受容体であるmGluR8についてprimerを設計し、ツメガエル発生過程における遺伝子発現動態をRT-PCRにより解析した。その結果、いずれの遺伝子も母性発現しており受精前から神経管閉鎖に関わる時期にも発現が確認された。Zic2も母性発現しており、他のZic遺伝子も中期胞胚変移後から発現開始することが知られていることから、時間的な矛盾は無いことがわかった。発現レベルの推移は原腸陥入から神経管閉鎖に関わる時期においてやや発現レベルが低下する傾向がみられmGluR8で顕著であった。また原腸胚において胚葉別に発現を調べたところ、すべての胚葉において両遺伝子が検出された。MTHFRの空間的発現をWhole Mount in situ Hybridizationで解析したところ、閉鎖開始前のステージにおいて神経板境界領域と原口周辺で発現がみられた。神経板境界領域はZic遺伝子が強く発現する領域と重複する。 Zic3過剰発現胚、およびZic2,3発現抑制胚におけるMTHFRとmGluR8の発現変動をRT-PCRにより解析した。その結果、MTHFRには発現の変動は見られないようであったが、mGluR8においてはZic発現抑制胚において発現が上昇する傾向が見られた。 本年度の研究により、発現パターンや遺伝子発現の変動等いくつかの点で、MTHFRやmGluR8遺伝子とZic遺伝子との重複や連動関係がみられた。
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