研究課題
すでに30年以上前に、脳においてリジン残基やアルギニン残基にメチル化を受けたタンパク質が豊富に存在することは示されていたものの、これまでほとんど注目されることはなく、そのメチル化修飾の意義に関する研究はほとんど存在しない。さらに、タンパクアルギニンメチル化酵素PRMTsと神経突起伸展効果の関連性について、アルギニン残基のメチル化が細胞分裂の停止から分化誘導に至る過程に関与しているのか、神経突起伸展を正に制御することのみに関与しているのか、など、その詳細については未だ解明されていない。まず昨年度は、PRMT1による核内でのタンパクメチル化がNeuro2a細胞での神経突起伸展作用に必要であることが明らかにしたが、それに引き続き、本年度は、PRMT1の酵素活性の調節因子として、同じPRMT familyのPRMT8に注目し、その関連性の検討を進めた。まずはPRMT8の発現様式に関して、特異的な抗体を作製し、その分布に関して詳細に検討した。その結果、海馬や扁桃体などの領域でPRMT8の強い発現を観察した。さらに、PRMT8は開始コドンがずれる可能性があることから、それぞれに対応した強制発現系を構築し、細胞内局在について検討したところ、膜局在から核局在へ大きく変化があることを見出し、Neuroscienceに記載された。この局在の変化とPRMT1との相互作用変化の関連性について現在検討を進めている。さらに中枢神経における突起進展刺激として、脊髄損傷を与え、PRMT8の機能解析を行った。すると、PRMT8は脊髄損傷から3日後にマイクログリア細胞に発現し始めることが判明した。現在、この発現の意義についても検討を進めている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
PLoS One 5
ページ: e8773
Neuroscience 163
ページ: 1146-1157
http://www.anat2.med.osaka-u.ac.jp/index.htm