研究課題
すでに30年以上前に、脳においてリジン残基やアルギニン残基にメチル化を受けたタンパク質が豊富に存在することは示されていたものの、これまでほとんど注目されることはなく、そのメチル化修飾の意義に関する研究はほとんど存在しない。さらに、タンパクアルギニンメチル化酵素PRMTsと神経突起伸展効果の関連性について、アルギニン残基のメチル化が細胞分裂の停止から分化誘導に至る過程に関与しているのか、神経突起伸展を正に制御することのみに関与しているのか、など、その詳細については未だ解明されていない。これまでの検討から、PRMT1の活性調節因子であると共に初期応答因子でもあるBtg2 mRNAの発現抑制により神経突起伸展レベルが抑制されること、PRMT1自身の発現抑制でも同様に神経突起伸展レベルが抑制されることを報告している。本年度は、さらに詳細にメチル化と突起伸展機構の関連性を検討した。その結果、突起伸展時に観察されるこのBtg2 mRNAの発現上昇機構に、PRMTファミリーであるCARM1がCBPをメチル化し、転写因子p53と結合することにより、Btg2転写調節領域に結合することを見出すことが出来た。これらの検討から、神経突起誘導時にはPRMT1およびCARM1の活性化により、協調的なタンパクメチル化が核内及び細胞質で起こることが重要であることを明らかにした。本研究成果は、今までほとんど機能を解析されてこなかったタンパク質メチル化酵素PRMTファミリーの神経細胞における機能のひとつを新規に明らかにするものであり、「脳に恒常的に頻繁に惹起するタンパク質のメチル化」の意義が世界で初めて解明でき、リン酸化と比類しうるタンパク質の機能発現のための新たな制御機構が我が国を発信源として国際社会に発信した意義深い成果である。
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Neurochemistry International
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http://www.anat2.med.osaka-u.ac.jp/index.htm