研究課題
脳室下帯では、成体においてもニューロンの産生が持続しており、新生ニューロンは、RMSと呼ばれる経路を、アストロサイトに被覆され鎖状に連なって嗅球までの長距離を高速に移動する。Slit- Roboシグナルは、脳形成過程において細胞移動・軸索伸長の忌避性ガイダンスシグナルとして知られているが、成体における機能は分かってない。我々はこれまでに、RMSを移動中の新生ニューロンがSlitを、また新生ニューロン自身とその周囲のアストロサイトが受容体Roboを発現していることを明らかにしてきた。新生ニューロンの移動におけるSlit- Roboシグナルの機能を解明するため、本年度は以下の2点について実験を行った。1)Slitノックアウト、(KO)マウスのRMSにおける新生ニューロンの挙動の解析RMSを含む脳スライスの培養を行い、RMS内を移動する新生ニューロンの挙動をタイムラプス撮影にて記録し解析した。Slit KOマウスでは、RMSにおける新生ニューロンの移動が不規則になり、速度が約40%低下していた。また、Slit KOマウス・野生型マウスの新生ニューロンを相互のRMSに移植する実験から、Slitは新生ニューロンの移動制御において、細胞自律的・非自律的な両側面で関与していることを明らかにした。2)培養アストロサイトにおけるSlitの機能の解析脳室下帯・RMSから分離・培養したアストロサイトと、Slit発現細胞株との共培養実験により、Slitはこのアストロサイトの分布を反発性に制御していることを明らかにした。
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Neuroscience Research 63
ページ: 155-164
http://k-sawamoto.com/