研究課題
成体脳で産生されたニューロブラストが発現するSlitタンパク質の機能について、以下の解析を行った。脳梗塞巣へのニューロブラストの移動におけるSlitの役割の解析線条体梗塞モデルマウスでは、数週後にニューロブラストが脳室下帯から梗塞巣へと移動するが、Slit遺伝子欠損(Slit KO)マウスではその移動が障害される。そこでSlit受容体Roboの梗塞脳での発現を詳細に解析したところ、傷害直後の線条体で活性化・増生する反応性アストロサイトがRobo2・Robo3を強く発現していることが明らかになった。ニューロブラストは、増生した反応性アストロサイトの突起に沿うように梗塞巣へと移動するが、Slit KOマウスでは新生ニューロンとアストロサイトは絡み合うように異常な細胞塊を形成しており、細胞間相互作用の障害が示唆された。嗅球の形成におけるSlitの役割の解析生理的状況下では、ニューロブラストはアストロサイトの形成する経路を経て嗅球へと移動して介在ニューロンに分化する。この移動過程の障害は、嗅球の低形成を惹起する。培養アストロサイトとニューロブラストの相互作用のタイムラプス撮影による解析から、ニューロブラストはアストロサイト上を移動する際にアストロサイト膜の形態を変化させるが、Slit KO細胞ではその作用が有意に低下していることを見出した。また、Slit KO細胞は、単独での移動には明らかな障害は見られないが、アストロサイトの単層培養上の移動のみ有意に障害されていることが明らかになった。これらの結果から、ニューロブラストはSlitを介するアストロサイトとの相互作用により、その移動経路の形成・維持に積極的に関与している可能性が示唆された。
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http://k-sawamoto.com/