研究概要 |
神経終末からの神経伝達物質の放出は、細胞外からのCaイオンの流入によるシナプス小胞とシナプス前膜との融合によって、仲介される。シナプス小胞とシナプス前膜との膜融合装置は、SNARE複合体であると考えられている。しかし、SNARE複合体にはCaイオン感受性がなく、Caイオン結合蛋白質であるシナプトタグミンと結合することが必要である。しかし、両者の結合親和性は低い。申請者らは、コンプレキシンがその中央部分で、SNARE複合体コンプレキシンとまたC末端部分でとシナプトタグミンと結合することを発見した。この結果からコンプレキシンがSNARE複合体とシナプトタグミンをつなぐ橋渡しをしている可能性を示唆した。コンプレキシンのC末端はSNARE複合体の会合化に影響していることを我々はこれまでに見いだしている。そこで、本年度はコンプレキシンのC末端の機能について着目し、リコンビナントタンパク質を用いて、シナプトタグミン、SNARE複合体、コンプレキシンの相互作用について検討した。シナプトタグミンとコンプレキシンはSNARE複合体非存在下でも直接結合することを見だした。また、シナプトタグミンとSNARE複合体の結合親和性は非常に低く、コンプレキシン依存的に両者の結合は増加した。さらに、シナプトタグミンとSNARE複合体の結合親和性の増加にはコンプレキシンのC末端が重要な役割を担っていることを発見した(Shimizu-Okabe, et al.第88回生理学会)。これらのことから、コンプレキシンはそのC末端を介して、SNARE複合体の構造を変化させる機能を有するだけでなく、シナプトタグミとSNARE複合体の結合を強めていることが示唆された。
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