本研究目標は音源地図作製の神経回路機構を明らかにする事である。音源地図は下丘で形成される事が分っているが、その詳細は解っていない。音源地図形成に関わる神経回路機構の解明のため、まず微小電極を用いたin vivo細胞外記録法でニワトリ下丘から単一細胞記録を行った。小型のスピーカーを左右の耳に音漏れが無いようにセットし、様々な両耳間音圧差と両耳間時間差を人工的に作り出し、個々の下丘の神経細胞応答の反応を調べた。 その結果、少なくとも3種類の発火様式が確認できた。1種類目は同側の音源に応答する神経細胞である。このタイプは左右音圧差、時間差両方に感受性があった。2種類目は、両側の偏った音源に対して応答を示した。このタイプは片方の音のみでは抑制の応答を示した。このタイプも左右音圧差、時間差両方に感受性があった。3種類目は、応答しやすい音周波数が左右で異なっていた。また音周波数によって応答する左右音圧差が異なっていた。1種類目の細胞が多く存在し、左右の耳の音圧差・時間差ともに感受性を持つ細胞が多い事から音圧差を計算する外側毛帯核及び左右の時間差を計算する層状角を通った情報が統合している事が解る。 また3種類目で見られた様に左右の周波数感の統合も下丘またはその下位の神経核で行われている可能性があり、神経回路機構を考える上でそれほど単純ではない事が推測できる。今後さらに下丘内の場所と発火様式の関係を詳しく見ていくと同時に、逆行性順行性に染色する色素を用いる事で音情報の入力様式の詳細を明らかにしたい。
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