研究概要 |
サッケード眼球運動の制御機構を明らかにするために、一次視覚野を損傷したニホンザルを用いて実験を行った。平成, 20年度においては運動パラメータの詳細な解析を行い、健常側へのサッケードと傷側へのサッケードと比較した。健常側へのサッケードにおいそは初速度のばらつきを補正しそ正確性を増すための制御が運動中に働いていることが観察された一方で、損傷側へのサッケードにおいてはこうした制御は著しく減少しており、初速度のばらつきがそのまま運動全体を支配していることが明らかになった。従来サッケード眼球運動は原始的で単純な運動であると考えられてきたが、今回の結果は、上丘系による運動の開始指令と、皮質を介した運動制御という複数の要素からなる複合的な糸によって生み出されていることを示唆している。サッケード眼球運動は注意や意欲といった高次の情報からの影響を強く受けていることが知られており、また臨床的にも様々な病態に関運した症状が報告されている。サッケード眼球運動の制御機構を明らかにすることによって単なる運動制御のみならずより広範の脳機能との関連を知る手がかりとなると考えている。 本研究で柵われている一次視覚野の損傷によって傷害される系は複数存在するが、眼球運動の制御においては特に小脳が重要であることが知られており、一次視覚野から視覚情報を受ける皮質-小脳系が補正的な制御機能を担っているのではないかと考えられる.現在上記の行動実験の解析と平行して、電気生理学実験の準備も進めており、今後は電気生理学実験によってサッケード眼球運動制御機構を明らかにし、さらにモデル的アプローチからより深く理解することを計画している。
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