サッケード眼球運動の制御機構を明らかにするために、一次視覚野を損傷したマカクザルを用いた実験を行い、その解析を行った。更に平成21年度においては上丘の神経活動の記録を行い、解析を進めている。現在までの解析により、一次視覚野の損傷によって、サッケード眼球運動中の補正的な制御が傷害されていることが明らかになっている。従来サッケード眼球運動は極めて速く短時間に終わり、運動中に制御を受けない単純な運動であると一般的に考えられているが、今回の結果は、一次視覚野を介した皮質系の視覚情報によって、運動の制御が行われていることを示している。また、運動の開始時においては一次視覚野の損傷による影響が少ないことから、上丘を介した系による運動開始指令と皮質を介した運動制御機構がある程度独立して機能しており、サッケード眼球運動はこうした複合的な系によって生み出されていると考えられる。過去に提唱されたモデルにおいては、特に運動の終止指令において小脳が重要であることが示唆されており、こうしたモデルによって、現在までの結果がより包括的に説明できるものと考えている。 サッケー眼球運動は、臨床的にも重要でうり、また注意や意欲と行った高次脳機能と強い関係があることも知られている。本研究によって、サッケード眼球運動の制御機構を理解することにより、単なる運動制御を明らかにするだけでなく、高次脳機能がどのように運動に影響を与えて行動として発現するかを知り、あるいはサッケード眼球運動の変化がら疾病診断を行う際の手助けとなる知見得ることができると考えている。
|