研究課題
ヒトや動物は、自分の腕や眼を滑らかに素早く、かつ正確に動かすことが出来る。生体の運動器は自由度が高く、非線形であるため、制御が難しい。しかし脳は適切な運動制御信号を環境に応じて生成している。脳の「外界の視覚情報を受け取り、処理し、筋への運動信号を生成する」という一連の視覚運動制御は、環境に適応して学習し変化するが、その情報処理の大部分は意識に昇らない潜在的な脳機能であり、神経メカニズムは未解明なままである。そこで本研究では、霊長類の潜在的で滑らかな高速・自動的感覚運動が、日々どのように修飾を受けているのか、その運動学習メカニズムを解明し、その知見を社会に還元することを目的とする。そのために、短潜時で誘発される追従眼球運動に注目した。追従眼球運動とは、視覚状態を良好に維持する高等霊長類で発達した運動系である。その着目すべき点は、視覚刺激によって約50ミリ秒で眼が動く「短潜時」で生じる運動である点である。このことから、視覚刺激を与えてから運動の開始までに関与する脳領域が限られている。代表者は、これまでに一貫した研究を行い、この視覚運動制御系に関して感覚(入力)〜運動(出力)までの全貌を明らかにしてきた。本研究では、学習を脳全体のダイナミックな変化と捉え、学習による脳の可塑的な変化の計算メカニズムを明らかにすることを目指す。具体的には、覚醒サルを対象に追従眼球運動の適応学習を誘発し、期間内に(1)(2)を押さえる。(1)学習前・中・後を通して、小脳の同一細胞からニューロン活動を記録する、(2)入力、出力、誤差、ニューロン活動について計算論的な解析を行う。当該年度には、(1)を行い、信頼できるデータを取り始めたところである。今後は、データの蓄積を行うとともに、ニューロン活動の解析を行って行く予定である。
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電子情報通信学会技術研究広告、社団法人電子情報通信学会 Vol.108, No.480
ページ: 99-104