研究概要 |
単一アクティブゾーン・レベルでの小胞動態の理解に向けて、今年度は、calyx of Heldシナプス前末端において、Alexa fluor 594を注入して構造をモニターしながらケイジドCa化合物(NDBF-EGTA)を2光子励起刺激法で活性化する、という新たな光学的手法を開発することに成功した。しかしながら、2光子励起刺激によって(蛍光Ca指示薬によってモニターされる)Ca濃度上昇が起きる空間的範囲が予想に比べて大きく、複数のアクティブゾーンに影響が及んでしまう可能性が非常に高いことが判明したため、slow Ca chelatorであるEGTAを同時に注入することによって問題が解決できるかを現在検討中である。 また、上記と並行して、小胞エンドサイトーシス機構の生後発達機構を、calyx of Heldシナプスを用いて検討した。その結果、生後発達前後でエンドサイトーシス機構が著しく変化し、より発達したシナプスでは、エンドサイトーシスはCaチャネルの最近傍であるCaナノドメインで、エキソサイトーシスと同時にトリガーされることが明らかとなった(Yamashita et al., Nat.Neurosci., in press)。この結果は、より発達したシナプスにおいては、単一アクティブゾーン・レベルでシナプス小胞が局所的にリサイクリングされる可能性を示唆している。この局所的小胞リサイクリングを示唆するもう一つの観察結果として、我々はCaチャネル自身とエンドサイトーシスに関わる分子AP-2が直接結合し、Caチャネルの開口によって、その結合が解離することを示している(Watanabe et al., J.Neurosci.,2010)。しかしながら、本仮説がより説得力を持つためにはより直接的な実験的証拠が必要であり、本研究課題の重要性が改めて認識されることとなった。
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