研究課題
全ての生物において、シグナル伝達システムの厳密な制御は、生命を維持することに決定的に重要であるといえる。そこで我々は、本研究において生体内でこれらのシグナル活性を蛍光・発光によりイメージング・観察するためのシステム構築を目指し、さらにこのシステムを様々なシグナル活性変化を検出するレポーターとして活用することで、個体の形態形成から恒常性維持までに至るあらゆる生命現象を対象とした幅広い研究に対応させることを目的とした。まず我々はガン、免疫異常、炎症などの多くの疾患に重要な役割を果たしていると考えられているNF-κBシグナルに注目し、そのシグナル活性を検出するためのシステム、改良型NF-κBレポーターシステム(NATシステム) を構築した。その結果、従来のNF-κBシグナルレポーターシステムに対し検出感度で18倍、特異性で5倍高い値を示したことから(lmmunology Letters ; 2007)、さらに我々は最終的な目標である"生体内におけるNF-κBシグナル活性のin vivoイメージング"を可能にするため、報告したシステムを用いて10系統以上のレポータートランスジェニックマウスの作製を行った。しかしこれらのマウス全てで有意なシグナル活性検出能を示さなかったことから、何らかのサイレンシングが起こっているのではないかと考えた。そこで遺伝子が不活性化される可能性が低いと考えられるニワトリへとプロモーター配列を変更し、引き続き6系統のレポータートランスジェニックマウスを作製した(cNAT mouse)。その結果、1系統でS/N比30倍の高感度でNF-κBシグナルを検出することに成功し、現在はその解析を行うとともにNF-κBシグナルに異常を来す遺伝子改変マウスと交配することで、検討を行っている。また、がんや発生、さらには神経形成にも重要な働きをNotchシグナルに対しても同様の手順で5系統のレポータートランスジェニックマウスを作製し(cNotchR mouse)、現在解析中である。
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