研究概要 |
HP1はα, β, γの3つのファミリー分子からなり、HP1γはユークロマチン領域のメチル化ヒストンに結合して部分的にヘテロクロマチン化を誘導し、エピジェネティックに遺伝子発現を抑制する因子であることが知られているが、マウス個体における研究はほとんど進んでいない。エピジェネティック制御因子の1つと言われているHP1γの変異マウスの生殖細胞は、第一減数分裂期で異常を呈することがわかった。また、HP1γ変異マウスの細胞ではヒストン修飾の状態が野生型と異なることがわかったので、本研究では、ヒストン修飾の状態変化が生殖細胞形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行った。HP1はトリメチルH3K9(H3K9me3)を介したH4K20のメチル化を亢進させることがin vitroの実験から示唆されていたので、H4K20me3を含むヒストン修飾の状態を免疫染色法によって調べた。また、他のHP1ファミリーやピストン修飾因子の発現についても免疫染色法によって調べた。減数分裂の進行を調べた結果、HP1γ変異マウスの生殖細胞ではレプトテン期からザイゴテン期への移行に遅延が見られ、パキテン期の生殖細胞数が著しく減少していることがわかった。また、HP1γ変異精母細胞でのヒストン修飾状態が変化していることがわかった。さらに、精母細胞におけるヒストンメチル化酵素がHP1γ変異マウスの精母細胞では集積できないことから、HP1γはヒストン修飾因子のリクルートに必須であることがわかった。HP1αおよびHP1βの発現パターンには違いが認められなかったので、精母細胞における正常なヒストン修飾にはHP1γが関与していることが明らかになった。
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