本研究では、マウス受精卵への顕微注入法にCre-loxP部位特異的組換え系を応用することにより、ES細胞を介さず、狙った遺伝子座位へ目的遺伝子を導入するTgマウス作製新手法(in vivo RMCE法)を開発し、将来的に疾患感受性遺伝子の機能解析へ応用することを目指している。本年度は、実際に本手法が効率良く働くか否かを検証し、その系の開発に重点を置いて研究を進めてきた。 まず導入ベクターの作製を行った。Tgマウスを蛍光観察で容易に判定できるよう、目的遺伝子として各種蛍光遺伝子を強発現するベクターを計11種類作製した。 次に、変異型loxPタグをゲノム上の既知の遺伝子座位に導入してあるマウス(独自に作製したもの)から得られた受精卵の前核に、作製したベクターとCre発現ベクターとを同時に顕微注入した。得られた仔マウスの遺伝子タイピングを行った結果、4%強の個体で導入コンストラクトが目的の遺伝子座位に挿入されていた。また、11種類全てのコンストラクトについて、目的のTgマウスを得ることがでもきた。さらに、その中の85%以上のマウスについて、次世代に導入遺伝子が伝わることを確認している。 これまでに、5色の蛍光遺伝子強発現Tgマウスをライン化している。全て同じ遺伝子座位に同様のコンストラクトが挿入されたものであるが、各Tgラインにおける目的遺伝子の発現は非常に強く、また数世代経ても安定したものであった。 今回得られた結果は、顕微注入法で様々な遺伝子コンストラクトを既知の領域に挿入し、複数のTgマウス系統を得た世界初の例である。開発したin vivo RMCEシステムは、従来のTgマウス作製法と同様の労力でルーチンに実行可能であることから、次世代型のTgマウス作製法として強力な手法となると期待される。今後、本手法を疾患関連遺伝子の機能解析等に応用していきたい。
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