我々はこれまでに、マウス受精卵への顕微注入法にRMCE法を応用し、予め指定された遺伝子座位にDNAコンストラクトを挿入する新規Tgマウス作製法"pronuclear injection-based targeted transgenesis (PITT)法"を開発した。これは、従来のランダム挿入に基づくTgマウスの欠点(発現の安定性及び再現性が得られない)を克服し、非常に再現性良い遺伝子発現を実現するシステムであり、コスト・労力的にも優れている。平成22年度は、以下の3つについて行った。 1)導入ベクターの改良 余分な配列を除去する為のFLPe発現カセットを導入ベクター内に組み込むことにより、解析に使用しうるマウスを1世代早く得ることに成功した。また、この第二世代のベクターを用いて、新たに3種類のTgマウス作製を行ったが、全ての系統で生殖系列に伝播するTg個体が得られたことから、PITT法(in vivo RMCE法)の実用性を再確認することができた。 2)Dreレポーターマウス作製 Dreレポーターコンストラクト(CAG-rox-EGFP-pA-rox-tdTomato-pA)を作製し、PITT法を用いてTgマウス作製を行った。生殖系列に伝播するTg個体が得られており、eGFPが発現することを確認している。 3)ノックダウンへの応用と再現性の検証 eGFPに対するmiRNA発現Tgマウスを作製し、得られた3系統のTgマウスにおけるノックダウン効率について、eGFP発現Tgマウスと交配して得られたダブルTgマウスを用いて調べた。その結果、全ての系統で各臓器におけるeGFP蛍光が確認できず、FACS解析からノックダウン効率がほぼ同じであることが分かった。PITT法はノックダウンマウス作製においても有効であり、その再現性は非常に高いことが明らかとなった。
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